ドイツおもしろ就職活動3つ
私しりぼうはドイツで就職活動をしたことがある。結論から言えば、 某日系企業で働いている。ただ、数人の日本人駐在員を除いて、 同僚は全員ドイツ人で、 管理職についている上長もドイツ人であり、 職場は極めてドイツ的だと思う。
ーとはいえ、 非日系のドイツ人で構成されるローカルのドイツ企業で働いたらことはない.。それゆえ、あくまでも、典型的な日本企業ではなく、 かなりドイツ的な会社であるとだけ断っておく。ー
まずは、私しりぼうのドイツでの就職活動を簡単に述べる。
既に冒頭で述べたように、私の会社は非常にドイツ人比率が高いので、日系企業といえども極めて非日本的/ドイツ的だと思われる。今回のテーマは、様々な企業に応募する中で、日本の就職活動時には体験しないことを紹介したい。
それらを紹介する事で、ドイツや海外で就職をしたい人へ何らかの助けになるかもしれない。
1.履歴書
ドイツで就職活動をする際に、履歴書を作成して、 企業に送る点は日本での就職活動と全く同じである。
日本の履歴書の場合、一定の型があり、 そのフォーマットに自分の情報を落とし込んでいく。例えば、下記の通りである。
他方でドイツの履歴書には決まった型はない。字体、レイアウト、 写真の有無さえ選ぶことができる。もちろん、分かりやすい書き方はあるだろうが、基本的には構成を自由に選ぶことができる。下記が一例である。
もちろん、以下のサイトで履歴書の型をダウンロードすることができるが、このサイトだけで114パターンもの型がある。あくまでも、自分の好みや応募先企業に合わせて、「自分自身の」履歴書を作ることが普通である。
ここでは、ドイツの履歴書紹介した。もちろん、あまり他国の事情は詳しくはないが、欧米各国であれば、このように比較的に自由に履歴書を作成することになると思う。
日本の履歴書のように決まった型があることが、良いことなのか悪いことなのかは、判断しない。
ただ、一つだけ日本の履歴書で良くないことは、 扶養家族の有無の欄は全く必要がないと思う。家族構成は、非常にプライベートな事柄であるであるし、まずは応募者の能力や人柄で判断するべきであって、自らではどうしようもない家庭的背景で、採用の有無は原則すべきではないと思う。付け加えれば、ドイツでは顔写真、性別、年齢に関するプライベートな情報も履歴書に入れるかは個人の判断になる。
どうやって仕事を探すのが一般的か。 今日では日本でもドイツでもインターネットを使って仕事を探すこと が一般的だろう。
インターネット以外のメディアで、例えば、テレビ、新聞、雑誌、 つり革広告、 あるいはハローワークからも求人情報を得ることができる。 もちろん、口コミや紹介という特殊な事情を除けば、 一般的には、企業が出す求人情報を見て、自分の能力や興味、 給与などの諸条件に合ったとき、履歴書を送り、応募をする。
しかし、ドイツでは別の興味深い方法で仕事を探すことができる。
それをドイツ語でInitiativbewerbung(しりぼう訳:主導的応募)と呼ぶ。
具体的には、求職者―仕事を探している人―が、 求人情報の有無にかかわらず、積極的に企業に問い合わせ履歴書を送る。 求職者の情報を受け取った企業は、断るか、面接に招くのか― 多くの場合、無視する―の連絡をする。
ドイツ語のInitiativbewerbungを日本に直訳すれば、「主導的応募」と言える。しかし、 何のことかさっぱり分からないだろうから、意訳をすれば、「 求職者からの売り込み」とでも言えば、 幾らかしっくりくるだろう。
何を隠そう、私しりぼうも、この「Initiativbewerbung(主導的応募)」の経験者である。
私ががした事は、 能力、職歴、その他条件を鑑みて、自分が働ける可能性のあると思う企業に片っ端からインターネットで調べあげた。次に、 人事のメールアドレスが公開されていれば、そこに履歴書を送り、 なければ一般問い合わせメールやフォーム、それらも無い場合、 電話で直接、「私の職歴に合うポジションの空きはないか」 を片っ端から確認した。
お断りやお祈りなどの何らかのリアクションがあればまだマシで、大多数の企業は、返事などしない。文字通り、なしのつぶてだ。私しりぼうの場合、40社ほど問い合わせたのちのある日、幸運にも、現在のドイツ人上司の目に止まり、 面接に招待され、採用という運びになった。
再び、手垢のついた言い方をすれば、「捨てる神あれば拾う神あり」というのをその際に、ひしひしと感じたものである。待てば海路の日和ありである。
ただ、少し脱線すると、人間というのはどうも過去の苦労や辛さを美化しがちである。大変な時には、そのような格言など、あまり心の支えるものではないが、過ぎ去って克服してしまえば、こういう格言を用いて、過去の暗い一部分を色鮮やかにさせてみせるのだ。
3.お試し日
ドイツの会社で面白い習慣がある。あらかじめ断っておくとすべての会社が実施している訳ではないし、どれほど一般的かは私しりぼうはしらない。しかし、この習慣を表す特定のドイツ語が存在するのであれば、そこまで珍しいことでもないだろう。
この習慣をドイツ語でProbetagという。英語にすればtrial dayとでも訳せるだろうか。
これは、面接をした後、採用が決まったあとに企業側から提示される、もしくは、求人者の側から依頼する。具体的には、もう一度職場に出向いて、同僚の紹介や業務内容、社内の雰囲気などを観察することができる。ーそう、最大の目的は、美味しいコーヒーが飲めるコーヒー機が置いてあるか確認するのだー
面接内容だけでは、実際の業務は把握できないので、入社をする前に、なるべく入社前と入社後のギャップが無いようにするためだ。就活御用達表現を用いれば、なるべく「マッチングミス」のないようにするためであり、労使双方にとって有益なやり取りだ。
私の場合、面接後で採用の通知が来た後、この「Probetag(お試し日)」をすることができないかを私の方から会社側に聞いた。なぜならば、どうしても面接では業務内容を想像することができなかったし、何よりも実際にそこで働いている人の様子や知りたかった。具体的には、忙しなく余裕がないのか、もしくは、ゆったりと落ち着いて働いているのかこの目で判断をしたかった。
理想としては、実際に働いている人から聞き取るのが一番だと思い、「空気だと思って頂いて全く相手をして頂かなくてよいので、数時間でもいいから、私を、事務所に置いておいてもらえないだろうか」とお願いをした。
本音を言えば、隙あらばトイレやフロアで「ばったりと」従業員に会ったときに、その会社の本音を聞き出してやろうと思っていた。
無事にその会社から了承をもらい、とある平日午前中に「Probetag(お試し日)」を実施する運びになった。
結論から言えば、この「Probetag(お試し日)」のおかげで、納得して内定を断ることができた。事務所の雰囲気や休憩所で従業員を取っ捕まえて、聞き出した情報を基に総合的に判断した。
もし、この「Probetag(お試し日)」をしていなかったら、どうなっていたであろうかと、想像すると恐ろしい。
もちろん、履歴書と同様で、この「Probetag(お試し日)」の形態はさまざまである。私の場合は、平日午前の半日だけであったが、私が聞いた他の話では、数日間実施する場合もあれば、Probetagと二次面接を同日にする場合もあるようだ。まさに、三者三様、ではなく「三社三様」と言えるだろう。
さて、私しりぼうの場合、手探りでの就職活動であった。その中で、上記で挙げたドイツ特有の就活事情を知るようになった。情報のない中から、自ら得ていくことは良い経験ではあるが、効率的な話ではない。もし、これらの話を通じて、ドイツもしくは海外ーややもすれば日本での就職活動でさえーで働きたいと思っている人の助けになれれば、非常に嬉しい限りである。