緑信号を渡る - どこのドイツだ!

在独歴約3年!思想の飴細工師が書き下ろす!

日本語になった3つのドイツ語

今回取り上げる内容は、日本語になったドイツ語である。しかし、それは、日本語化したドイツ語ではない。例えば、カルテはドイツ語のKarteに由来するとか、ワンダフォーゲルはWandervogelである等の日本語=ドイツ語の語源に関する話ではないということだ。
 
では、ここでのテーマは何か。それは私の中で日本語になったドイツ語である。
 
いつもの抽象的で分かりにくい表現ではあるが、しばしお付き合い願いたい。
 
在独3年が経ち、私生活、職場で常にドイツ語に触れている。一方で、日本語を使う機会はかなり限られている。
 
もちろん、母語である日本語を忘れる訳ではないが、久しぶりに話をすると単語がすぐに出て来なかっり、へんてこりんな表現をする時がある。
 
中でも、「ああ、海外生活も長くなったな」と感じる時は、ドイツ語特有の表現方法をそのまま日本語にしてしまう時である。確かに、日本語ではあるのだが、日本人があまり使わない不自然な表現になる。
 
そこで今回は、私しりぼうの中で日本語になってしまったドイツ語の表現を紹介する。
 

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(2017年11月 フランクフルト郊外 クリスマスマーケットにて筆者撮影)
 
1.人はこう言った。
英語でも同様の表現がある。
例えば、
 
Tom said that....
(トムは○○と言いました。)

 

 

 日本語の場合、「トムはお腹が空いたと言いました」と言う。ただ、ドイツ語に慣れてくると、「トムは言った、お腹が空いている、と」言う方が自然になってくる。
 
特に、言った内容が長くなればなるほど、「○○は言った」の表現が楽になる。
 
トムは言った。仕事が楽しくなるには時間がかかるので、もう少し我慢してこの会社を続けたい、と。
 
 
2.今、分かったよね。
ドイツ人との会話の中で、あなたは何か新しいことを知ったとする。何でもいい。例えば、近所に新しいスーパーができたとか、電動ドリルの使い方を教えてもらったなど。
 
その時、あなたは「あ、それを知らなかった」と言うかもしれない。
 
英語であれば、I didn't know that.
ドイツ語であれば、Das wusste/kannte ich nicht.
 
もしその言葉をドイツ人の前で言ったならば、かなりの高確率で、「Jetzt weißt du es!!(でも、今知っているでしょ!/分かっているでしょ!)」と言い返されるだろう。
 
確かに、「でも、今知っているでしょ/分かっているでしょ!」はややきつい表現に聞こえるかもしれない。
 
しかし、悪い意味で使うのではなく、「以前は知らなかったけれども、今は新しいことを知ったよね!/分かったよね!」の意味であり、ポジティブな文脈でこの表現は使われる。
 
私しりぼうも日本語で話をしている時に、そのままドイツ語のように言ってしまうときがある。
 
3.皮肉
ドイツ人と話をしていて一番難しいことは何か。
 
その一つはドイツ人特有の皮肉である。
 
典型的なドイツ人の皮肉はこれだ。
 
ある事柄が自明である場合、あえて反対の言い方をする。言い換えれば、何かわかり切っていることを言うと、逆の言い方をして返事をされる。
 
ここで具体例を挙げた方がこのドイツ人の皮肉を理解し易いと思う。
 
これは、実際にあったエピソードである。実際にはこんな会話をする。
 
事例1
場面は会社の事務所、登場人物は同僚のドイツ人Aと日本人Bである。
その日は大雨で事務所の中にいても、雨音が聞こえるほどであった。
 
ドイツ人A:今から昼食に入るね。いつも通り、ランチのあと散歩に行って、一時間後、事務所に帰ってくるね。
 
日本人B:分かった。じゃあ、またあとで。
 
(一時間後、Aが事務所に帰ってくる。大雨の為、Aのコートはずぶ濡れである。)
 
 
ドイツ人A:今、帰ったよ。
 
日本人B:ずぶ濡れね、雨は降ってた?
 
ドイツ人A:いいえ、全然!シャワーを浴びただけよ!
 
日本人B:ええ!本当?!
 
しりぼう:(こ、これは典型的なドイツ人の皮肉だぞ・・・。「ええ!本当?!」ではなく、「バスタオルを忘れたのは間違いなさそうだな」と答えると面白いのだが・・・。)

 

 
もう一つ本当にあったエピソードを紹介する。
 
事例2
場面は商談、ドイツ人のお客さんとしりぼうとの会話である。
 
しりぼう:いやー、ドイツに3年住んでいますよ。
 
ドイツ人:3年だけでここまでドイツ語を話せれば、素晴らしいわよ。
 
しりぼう:私にはドイツ人の妻がいるんですよ。
 
ドイツ人:あら、それは良い事ね。
 
しりぼう:しかも、妻はドイツ語教師です。ですので、私は彼女の生徒みたいなものですね。とすれば、私がドイツ語を間違った場合、ドイツ語をきちんと私に教えなかった妻のせいにすることができるんですね。
 
ドイツ人:まぁ、何と親切な考えなこと。

 

 
この会話の面白さを理解できれば、ドイツ人の精神をかなり理解していることになるだろう。
 
ただ、こういった会話に慣れてしまうと日本語で話をしている時も、皮肉を言ってしまう。
 
定期券を忘れ、会社に遅刻し、客先でトラブルが頻発し、ヘトヘトで帰宅中、水たまりに足を突っ込んでしまったその瞬間、「ああ、今日は最高の日だな」とでも言ったら、ドイツ人かもしれない。
 
だからと言って、ドイツ人の皮肉をすべて理解できる訳でもないし、日本人にも訳の分からない日本語を話してしまう中途半端な人間になりつつある。
 
海外長期在住者特有の症状かもしれない。